アルツハイマー病のリスクを下げる!

疾患は発症前診断が出来でも予防できなければ意味がありません。今のところは、アルツハイマー病を完全に予防することは出来ませんが、リスクを下げる方法はあります。発症前診断は無駄ではありません。

  1. 適度な運動:疫学的にも実験科学的にもある程度証明されています。毎日1時間程度のウォーキングをするのがよいとされています。ただし、無理と怪我は禁物です。駐車場の車止めなどは要注意です。高齢者が転倒して骨折した場合、寝たきりになることが多くあります。そうすると、当然ながら運動はできなくなりますから、認知症が発症しやすくなり、すでに発症している方は病態が進行します。
  2. 睡眠障害の克服:睡眠はアミロイド(Aβ)の蓄積を抑制します。規則正しい適度な睡眠がよいと思われます。睡眠障害は、精神疾患の引き金としても認識されつつあります。万病の元です。ただし、ショートスリーパーは例外かもしれません。
  3. 頭部外傷の予防:昔からプロボクシングの選手が認知症になりやすいことは知られていました。最近は、プロのアメフトやサッカーの選手もリスクが高いとの報告があります。脳は、頭蓋骨の中で髄液という液体に浮かんだ豆腐のようなものです。大切にしなければなりません。
  4. 適度なアルコールの摂取:ワインや日本酒にして1合~2合程度のアルコールはよいとされます。以前はポリフェノールを含む赤ワインがよいとされていましたが、お酒の種類は関係ないようです。ただし、飲めない人が無理に飲む必要はありませんし、1週間に1日は休肝日を設けた方がよいでしょう。
  5. 動脈硬化の予防:動脈硬化はもともと血管性認知症の原因ですが、アルツハイマー病のリスクを上げます。血中の中性脂肪やコレステロールを下げる食生活の実行および薬剤(スタチン等)の服用で対応することが出来ます。また、塩分過摂取や喫煙はやめるべきです。禁煙は何歳になって始めても遅すぎることはありません。当然ながら、高血圧もよくありません。
  6. 糖尿病の予防:糖尿病がアルツハイマー病の発症率を2倍程度上昇させることが分かり、注目を受けています。上記の「適度な運動」は糖尿病に対する予防効果がありますから、関係あるかも知れません。
  7. 中年期メタボの予防:中年期におけるメタボリック症候群がアルツハイマー病のリスクを上昇させると報告されました。高齢期での肥満はあまり関係ないようです。因果関係やメカニズムは不明です。
  8. (恐らく上記の理由が原因で)臨床試験では成功しませんでしたが、クルクミン(ウコン)・DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)は予防効果が期待されます。アミロイド(Aβ)沈着抑制効果や抗酸化作用によると考えられます。DHAやEPAは肉食よりも魚食の方がたくさん摂取することが出来ます。問題は、ヒトが摂取する場合の適量ですが、正確な値は決まっていないと思います。今後の課題です。次世代型アルツハイマー病マウスモデルや霊長類のモデルを用いた研究で、道が開かれるでしょう。
  9. 性ホルモン:性ホルモンの体内レベルは加齢とともに低下します。女性は男性よりもアルツハイマー病を発症する率が2倍ほど高いことが分かっています。男性と違って、閉経後、急激に性ホルモンが低下するからであろうと考えられています。また、更年期障害の治療に性ホルモン投与を行った女性は発症リスクが低いという報告があります。ただ、このホルモン療法は乳がんや子宮がんのリスクを上げるという問題がありますので、簡単な選択ではありません。性ホルモン(男性ホルモンと女性ホルモンの両方)はアミロイド(Aβ)分解酵素ネプリライシンの発現を上昇させますから、ここにメカニズムがありそうです。ちなみに、運動によって筋肉が増えると男性ホルモンが上昇します。石原良純氏が取材に来られた時にこの話をしたところ、「歳をとっても恋をすることはよいのではないですか?」と質問されました。実験科学的根拠はありませんが、正しいかもしれません。中高年が嵐やAKBに熱を上げてもよいのです。
  10. その他:これはある研究者から聴いた話ですので、科学的根拠はありません。クラシックのピアニストは健康を維持しながら長生きするそうです。手の動きを支配する脳の領域が非常に広いことは注目に値します。ピアノの演奏は、様々の運動神経と感覚神経を総合的に動員しますから、普通の人がボーッとしているのに比べたら、脳が相当活発に活動するのではないでしょうか。それから、私の想像ですが、プロのピアニストは引退後も毎日何時間も演奏するのではないでしょうか。ピアノに限らず、楽器は悪くないかも知れません。

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David Holtzman

David Holtzman, Washington University, St. Louis.