免疫療法の根本的問題点について

私は一生命科学者として素朴な疑問が二つあります。抗体は、末梢の静脈から投与されます。私の知る限り、抗体療法が脳神経疾患の治療で成功した例はありません。抗体は血管脳関門を通過することが出来ないからです。末梢に投与された抗体の内で脳内に到達するのは0.1%程度とされていますが、Todd Golde (University of Florida)によると0.01%だそうです。

また、マウスでは抗体を腹腔内投与していたのに対して、ヒトには静脈投与しています。この違いも気になります。ヒトの場合、血中の免疫グロブリン(IgG)の濃度は12 mg/ml(トータルで約60g)もあるのに対して、脳実質の切片を抗IgG抗体で免疫染色してもほとんど染まりません。この事は、免疫グロブリンが脳実質に移行することが不可能であることを意味しています。

なお、2014年になってロッシュがおもしろい論文を発表しました。血管脳関門を通過するタンパク質トランスフェリンを利用して抗体を脳に導入する方法です。随分効率が上がるようです。

次に、抗アミロイド(Aβ)抗体は、もう一つのAPP断片であるCTF-βにも結合します。CTF-βはAβよりも神経毒性が強いことが分かっています。抗アミロイド(Aβ)抗体の有効性は第一世代(旧世代)モデルマウスで確かめられたのですが、CTF-βを蓄積するのはマウスモデルだけです。つまり、最悪の場合、抗アミロイド(Aβ)抗体に前臨床性アルツハイマー病に対する予防効果が見られない可能性があります。私は、この大規模縦断的研究が成功することを切に願っています。人類が次のステップに進むために必要だからです。しかしながら、アルツハイマー病の免疫療法はハンス・クリスチャン・アンデルセンの”裸の大様”に思えて仕方がありません。

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Christine and John

Christine Van Broeckhoven and John Hardy.